クリソコラ・ブレスレットの物語 – 『波の内側』
舞台:広島県尾道市・坂の上の児童養護施設
主人公:志保(しほ/47歳/女性/児童養護施設職員)
✨【序章】
「優しさって、重たくなることもあるんじゃね」
そんな言葉が、心の奥に残っていた。
志保は、尾道の坂の途中にある小さな児童養護施設で、20年目の春を迎えた。
世話をする子どもたちの数は変わっても、
彼女の胸に広がる“寄り添う”という想いは変わらなかった。
だが最近、朝の目覚めが重く、笑顔が少し疲れていることに自分で気づいていた。
そんなある日、尾道水道を見下ろすギャラリーで、
深いグリーンとブルーが入り混じったクリソコラのブレスレットと出会った。
「これは“感情の海”を整える石」と紹介されていた。
手にした瞬間、不思議な波が胸の奥から静かに満ちてきた。
🌿【第一章:波のささやき】
志保はクリソコラのブレスレットを左手首に着けたまま眠ってみた。
夢の中で、透明な水の中に自分が浮かんでいる映像が現れた。
その水は言葉を持たず、ただ穏やかに志保の身体を包んでいた。
「あなたが抱えているのは、他人の涙かもしれない」
そんな“声なき声”が、深く響いた。
目覚めたとき、
胸のあたりにふわりと軽さがあった。
長年、自分のことよりも先に子どもたちを思っていた日々。
それは愛だったけれど、ときに自分を置いてきぼりにしていたことも、ようやくわかった。
🌌【第二章:エネルギーの揺れ】
クリソコラのブレスレットは、
ときどき不思議な“反応”を見せた。
ある日、強い不安を抱えた子が泣き出したとき、
手首に着けたブレスレットが、少しだけ熱を帯びたように感じられた。
そのあと志保は、
子どもの感情が自分の中にも入ってきていたことを実感した。
「これは、境界が必要っていうサインかもしれんね……」
クリソコラは、「優しさを守るための境界」を教えてくれているようだった。
緑は“心の中心”を、
青は“伝えること”を、
静かにサポートしてくれていた。
🪞【第三章:感情の再構築】
月の光がやわらかく差し込む夜。
志保は机にクリソコラを外して置いた。
「本当に、この仕事をずっと続けられるんだろうか」
ふとそんな疑問が浮かんできた。
けれど、そのとき、
心の奥にふわりと浮かんだ子どもたちの笑顔が、
波紋のように胸に広がっていった。
“私が誰かを癒していたのではなく、
私もまた、ここで癒されていたんだ”。
その気づきとともに、ブレスレットの色が
夜の光に照らされて、静かにきらめいた。
🌠【エピローグ:内なる海とともに】
今、志保はクリソコラのブレスレットを
左手首につけて、毎朝深呼吸をするようになった。
感情が高ぶる日も、泣きそうになる日も、
「大丈夫」という内なる波が、いつも心に寄り添ってくれる。
クリソコラは、
“優しさの限界”ではなく、
“優しさの呼吸”を教えてくれた。
波の内側には、まだ名前のない安らぎがある。
それを見つける旅を、志保は今も続けている。
🌈【この物語が伝えていること】
“優しさ”は、ただ与えるものではなく、
ときに守り、ときに満ち引きを知る“波”のようなもの。
クリソコラは、
そのリズムを忘れた人に、
「戻る場所」の感覚を教えてくれる。
あなたの優しさが、あなた自身をも包むように。
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