ロシア産フェナカイトの物語 – 『光を返す日』
舞台:静岡県・三島市の小さな商店街
主人公:大輝(たいき/29歳/書店員)
テーマ石:ロシア産フェナカイト(丸玉)
✨【序章】
三島の商店街にある、古びた個人書店。
大輝はそこで、ひっそりと働いていた。
大型チェーン店では味わえない、ゆるやかな時間。
けれど、なぜだかこの頃、
心に“霞”がかかったように、
何をしても色が薄く感じられていた。
「夢って、何だったんだっけ」
学生の頃は映画監督になりたかった。
でも今は、目の前の本の整理と、誰かの会話の相槌。
それだけで1日が終わっていく。
🌿【第一章:白い丸】
ある雨の日。
ふらりと入ってきた年配の女性が、
読み終わった文庫を差し出し、こう言った。
「お代の代わりに、これを受け取ってくれませんか」
彼女が置いていったのは、
手のひらに収まる小さな丸玉。
透明で、白く光を含んだような、
見たことのない結晶だった。
「それ、何かを思い出す時が来たら、きっと返してね」
女性はそれだけ言って、傘をさして消えた。
🌌【第二章:光の反射】
その夜、大輝は電気を消した部屋で、
結晶をそっと手にとってみた。
外は雨。
静かな窓辺で、
結晶の中に灯りがゆらめいて見えた。
その瞬間、頭の奥に“シーン”という高音が響き、
まるで昔の記憶をスライドで映すように、
ひとつの場面が浮かんだ。
高校時代。
文化祭の映像上映会で、
はじめて作品をつくったときのこと。
評価ではなく、
「自分の中の何かが動いた感覚」。
あれがすべてのはじまりだったのだ。
🪞【第三章:つながる声】
翌朝、書店で小学生の男の子がやってきた。
「このあいだの続き、ありますか?」
絵本のシリーズを探していたその子に、
大輝はふと声をかけた。
「映画とか、好き?」
すると男の子は、
ぱっと顔を輝かせた。
「ぼく、将来カメラマンになりたいんです!」
その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥で何かがほどけた。
「やっぱり、この気持ちを無視しちゃいけない」
そう、心の底から思った。
🌠【エピローグ:光を返す】
数日後。
大輝はあの結晶を持って、
商店街の路地裏へと足を運んだ。
そこには、あの日の女性がいた。
まるで待っていたかのように。
「返しに来たのね?」
彼女はそう言って、
やわらかく微笑んだ。
「そう。もう“思い出した”から」
女性はうなずいた。
「じゃあ、次はあなたが、その光を誰かに返していく番ね」
【結晶評価】
💎 結晶名:記憶の光球(Orb of Remembered Light)
🪐 発光色:乳白(Milky Glow)+淡金(Gentle Gold)
🌌 特徴キーワード:記憶の再点灯・夢の循環・光のバトン・目覚め
🌈【この物語が伝えていること】
夢を忘れたと思っていても、
それは消えたのではなく、
静かに眠っていただけかもしれない。
誰かの言葉、ふとした出会い、
そして手のひらの小さな結晶が、
その眠っていた夢をそっと起こしてくれる。
ロシア産フェナカイトのように、
静かでいて強く、
人の記憶の深い場所に、
もう一度“光”を灯す存在。
忘れていた“自分のはじまり”は、
いつでも帰ってきてくれる。
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