ロシア産フェナカイトの物語 – 『円のなかの静けさ』
舞台:兵庫県神戸市・北野町
主人公:圭吾(42歳/陶芸講師)
テーマ石:ロシア産フェナカイト(丸玉)
✨【序章】
古い異人館の並ぶ坂道を上った先に、
圭吾の小さな陶芸教室はある。
42歳。
若い頃の情熱は薄れ、仕事も日々の繰り返しになっていた。
最近は、作品づくりに気持ちが入らず、
教えるだけの日々が続いていた。
「もう、焼きたい形がわからない」
そんな自分に、
心のどこかで戸惑っていた。
🌿【第一章:転がってきた光】
ある日、生徒のひとりが不思議な贈り物を持ってきた。
「先生に似合うと思って」
そう言って手渡されたのは、
ビー玉より少し大きな、透明で真ん丸の石。
「ロシアのフェナカイトっていう石らしいです」
そう聞いたが、圭吾にはピンとこなかった。
ただ、手のひらにのせたとき、
ほんの少し――温かいものを感じた。
棚の隅に置いておくつもりだったのに、
気づけばその夜、
なぜか寝室に持ち込んでいた。
🌌【第二章:まるい夢】
その夜、圭吾は変な夢を見た。
自分が大きなろくろの上に立っていて、
足元では土の円盤がゆっくり回っている。
自分の手も、体も動いていないのに、
器が勝手に形になっていく。
ふと、そばに誰かが立っていた。
誰だか分からないが、
懐かしいような、安心するような気配。
その人が言った。
「答えは、もう焼かれていたんだよ。
ただ、思い出せばいい」
🪞【第三章:思い出の器】
目覚めた圭吾は、しばらくぼうっとしていた。
けれどなぜか、棚の奥にしまいこんでいた
古い作品のことを思い出した。
二十代の頃、夜を徹して作った皿。
歪んでいて、形も不安定だったが、
その中には確かに“自分の好き”があった。
思い立って、教室の釜で久しぶりに土を練った。
夢で見たように、何も考えず、
ただ、ろくろの回転に身をまかせる。
気づけば手の中に、
かつて作った皿とよく似た形が生まれていた。
棚の上、フェナカイトの丸玉が
わずかに光って見えた気がした。
🌠【エピローグ:再び静けさへ】
今もその丸玉は、
教室の窓辺に置いてある。
時々、生徒が「これ、なにか特別なんですか?」と聞いてくる。
圭吾は少し笑って、こう答える。
「夢を思い出させてくれる石なんだ」
それ以上は説明しない。
けれどあの夜見た夢の感触は、今でもはっきり覚えている。
「焼かれたものは、消えない。
忘れても、きっとどこかに残ってる」
それを知ったことで、
もう一度、土と話せるようになった気がしていた。
【結晶評価】
💎 結晶名:夢の炉結晶(Dream Kiln Sphere)
🪐 発光色:乳白光(Milky Glow)+やわらかな金色(Gentle Gold)
🌌 特徴キーワード:再出発・夢の記憶・形を思い出す・内なる火
🌈【この物語が伝えていること】
夢を忘れることは、悪いことではない。
ただ、忘れたまま生きると、
どこかで“自分の火”が小さくなる。
でも、記憶の奥には、
ちゃんと焼かれた「好きだった形」が残っている。
それを思い出させてくれるのは、
だれかの声ではなく、
ふと出会った静かな存在かもしれない。
フェナカイトのように、
何も言わずそばに在るものが、
心のろくろをもう一度回してくれるのだ。
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