:「闇にひそむ約束」
― グリーンランド産ヌーマイト・ブレスレットの記憶 ―
第1章 黒曜の贈りもの
27歳の映像作家・沙耶は、撮影に向かう途中、偶然立ち寄った骨董市で目を奪われた。
そこにあったのは、黒曜石のように深く光る、漆黒のブレスレット。
石の間にちらりと青金の光が混じっていた。
「これはグリーンランド産のヌーマイト。最古の石のひとつ。
あなたみたいな人を、ずっと待ってた気がします」
そう言った店主の声が、どこか現実味を欠いていた。
沙耶は吸い込まれるように、そのブレスレットを手に取った。
第2章 見えない“何か”
ブレスレットをつけ始めてから、沙耶は妙な体験をするようになった。
いつも通っている道で、見覚えのない角を曲がってしまう。
初めての場所なのに、どこか懐かしく感じる。
カメラのファインダー越しに、人の後ろに「黒いもや」のようなものが映ることも。
それは決まって、心が疲れている人の背後にだけ現れた。
第3章 声なき導き
ある夜、夢の中で声がした。
「あなたはまだ、本当の闇を知らない。
でもその中にこそ、本当の光がある」
その声の主は、青金に輝く目を持った人物だった。
目覚めた後も、沙耶の手首にはヌーマイトがしっかりと巻かれていた。
そこから彼女の映像作品は一変する。
闇を描きながらも、観た人が心の奥で泣けるような、優しい作品ばかりになっていった。
第4章 闇が教えてくれたこと
仕事の依頼が次々に舞い込む中、沙耶はある人物に出会う。
声が出せなくなった少女・莉緒。
彼女の目には、生きる気力すら感じられなかった。
沙耶は直感で感じた。
この子の“闇”を記録するのは、私の使命だ。
ヌーマイトのブレスレットが、彼女の心を静かに保ち、
莉緒の中の声なき叫びを、丁寧に映像で形にしていった。
第5章 約束の光
莉緒のドキュメンタリー作品が完成した夜。
沙耶はあの夢の声に再び出会った。
「あなたは闇を恐れず、見つめた。
だから今、光のかけらを授けよう」
目が覚めると、ブレスレットのひと粒が消えていた。
代わりに、手のひらには淡い金色の砂が残っていた。
沙耶は理解した。
ヌーマイトは、守り石ではない。
魂の深部に眠る“本当の強さ”を引き出す石なのだと。
✴︎ エピローグ:それでも、夜は優しい
数年後、沙耶の作品は国内外で評価され、多くの人に勇気を与えていた。
ブレスレットは今も変わらず、彼女の手首にある。
時折、夜の静けさの中で、石がカチリと小さく鳴ることがある。
まるで、「まだ、終わっていない」と語りかけるように。
【この物語が語る、ヌーマイトの真髄】
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ヌーマイトは、“真の自己”と向き合うための鏡。
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人の奥深くにある影を照らし、静かなる勇気を引き出してくれる。
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闇を恐れず、そこに“知恵”と“浄化”の光を見出すための石。
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