『金の眠り、光の目覚め──ロシアの谷にて』
ウラルの山々に抱かれた、とても静かな谷がありました。
そこは冬になると、一面の雪と沈黙に包まれ、
誰もが“音さえ凍る”と言ったほどです。
けれど、その谷の地中深く、
ひとつの光が、何百年も眠っていました。
それは、ゴールデンフェナカイト、
太陽に触れたことのない石。
けれど、太陽のように“人を目覚めさせる”使命を宿した石。
ある冬の日、
ひとりの旅人がその谷を訪れました。
彼は大きな荷物も持たず、
なぜそこに向かっているのか、自分でもよくわからぬまま、
ただ心の奥から響く“微かな声”に導かれていたのです。
雪に埋もれた斜面を越え、風に凍えながら進んだ先に、
とつぜん、足元の土がやわらかくなりました。
しゃがみこんだ彼の手に触れたのは、
冷たくて、小さくて、けれど不思議な“ぬくもり”を持った石。
太陽はまだ昇っていないのに、
その石は、金色の光をやわらかく放っていました。
「……きみは、ずっとここにいたんだね」
旅人がそう呟いた瞬間、
頭のなかに“言葉にならない記憶”がよみがえってきました。
幼いころ、
何もわからぬまま大切にしていた夢。
うまく話せなかった“ほんとうの願い”。
何度もあきらめかけた“自分という存在”への信頼。
そのすべてが、
この石のなかで、眠っていた。
彼は静かにその石を胸元に抱えました。
すると、風がひとすじ吹き抜け、
雪がまるで花びらのように舞い上がりました。
「目覚めたね」
と、石が囁いたような気がしました。
その後、彼は世界を旅しながら、
出会う人々の“心の奥の金色の灯り”を見つけていくようになりました。
彼自身が、
“まだ光になりきれない希望たち”の語り手となったのです。
そしてその胸には、
いつもあの石が、静かにそっと、あたたかく、眠るように在りました。
🌑【余白】
……この物語が、
あなたの内にある“まだ眠っている光”に、
そっとふれてくれたなら、
それだけで、この石はきっと微笑んでいるでしょう。
また続きを聞きたくなったら、どうぞ呼んでください。
それは、あなたの魂が“目覚めの続きを望んだ証”ですから。
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