【ロシア産フェナカイト】Vol.1 声にならなかった願い | ライネライト・クリスタル – 天然石セレクトショップ

【ロシア産フェナカイト】Vol.1 声にならなかった願い

【クリスタル】ロシア産フェナカイト
【登場人物】雅人(38歳・男性・不動産営業)
【舞台】大阪府堺市

🌿 パワーストーン物語 第一話『声にならなかった願い』

雅人がその石を手にしたのは、仕事帰りの夕暮れ時、ふらりと立ち寄った小さなショップだった。

店舗の奥、スポットライトが当たる棚の一角で、妙に静かな気配を放つ小さな原石。

それが彼の視界に、言葉もなく滑り込んできた。名前も知らなかった。ただ、なぜか目を離せなかった。

その日は営業先との会話がうまく噛み合わず、心の奥に妙な疲れが残っていた。

誰かと話すことが、怖いような、煩わしいような。

だけど一人になると、どこか物足りない。そんな日だった。

「この石、何に使うんですか?」

思わず声に出すと、店主は笑ってこう言った。

「“使う”というより、“気づかされる”って感じですね。あなた自身が、何を置き去りにしてきたか、とか」

思わず笑ってしまった。

なんとも抽象的で、現実味がない。

けれど、否定はしなかった。

なぜだか、その言葉にうっすらと覚えがある気がしたのだ。

数日後、その石を自宅の机の上に置いたまま、雅人は毎晩いつものように、仕事の資料やスマホを開いていた。

石に触れることもなく、ただ“そこにある”だけだった。

けれど、ある晩、何の前触れもなく、ある感覚が訪れた。

「最近、誰かに“ありがとう”って、ちゃんと伝えたことがあったか?」

そんな問いが、ふいに内側から浮かんだのだ。

石のせいだとは思いたくない。

けれどその夜、雅人は3ヶ月も連絡を取っていなかった古い顧客に、ふとメールを送った。

「その後、お変わりありませんか?」

数時間後、短い返信が来た。

「ちょうど、引っ越しを考えていたんです。あなたのことを思い出していたところでした」

偶然なのか、何かの導きなのか。

そんなことはわからない。

ただ、雅人はこのやりとりを不思議に温かく感じた。

その石に触れたわけではなかった。

けれど“そこにある”だけで、何かが変わっていく。

自分の中に、言葉にならなかった感情や、置き去りにしていた想いが、少しずつ浮かび上がってくる。

それはまるで、ずっと黙って隣にいてくれた友人が、ようやく小さく頷いてくれたような感覚だった。

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